第1部
民家再生と環境・コスト
〜研究成果の概要〜

1.1 民家再生と環境・コスト

 近年「環境」という言葉が、あらゆる分野におけるキーワードの一つとなっているが、建設
廃棄物の問題、地球温暖化の問題、熱帯林破壊の問題など、住宅も多くの環境問題と密接に関
わっている。
 民家再生は、個々の住宅がもつ文化・歴史を継承しながら、その構成部材を再利用していく
行為である。従って、この行為は上記のような環境問題に対する一つの解決策をも示してお
り、実際、民家再生に関わる人の多くが、「民家再生は環境にやさしい」という意識を持って
いる。しかしながら、民家再生は「どのくらい」環境にやさしいのだろうか。
 一方、民家再生が、住宅文化・歴史を継承する手法としても、環境負荷を削減する手法とし
ても重要であるならば、この普及を図ることの意味は大きい。しかし、一般に民家再生は、通
常の解体・新築と比較して高いと言われる。こうした一般的なイメージは、民家再生の実際を
適切に表現しているだろうか。一般に、民家再生が高いと言われる場合には、安価なプレハブ
住宅等を想定し、これと比較しているが、両者では得られる住宅の質が全く異なっている。得
られる住宅の質を揃えても、民家再生は「高い」のだろうか。
 本報告書は、実際に行われた7つの民家再生事例を対象として分析を行い、以上の2つの疑
問〜民家再生による環境負荷の削減効果とコストへの影響〜を明らかにしようとしたものであ
る。再生工事が行われなければ、旧邸は全面解体されて部材は全て廃棄され、更地に新しく新
築する建替工事が行われたと考えられる。そこで、本報告書では図-1.1.1のように再生工事に
対して建替工事を想定し、これを比較対象として、環境負荷の削減効果とコストの評価を行っ
た。なお、発生する環境負荷については、現場で投入される建材や設備の製造段階まで遡って
計算を行っている。


図-1.1.1 比較対象



1.2 民家再生による環境負荷の削減効果

 建築工事における木材の再利用率を再生の度合いを表す指標(横軸)とし、工事全体の環境
負荷の削減率(縦軸)との関係について見たものが図-1.2.1 である。図に示された環境負荷
が、本報告書において対象とした環境負荷であり、直線及び数式(相関係数)は、7つの事例
をもとに推定した平均的な環境負荷の削減傾向を表現している。
 図によると、再生によって木材、CO2(バイオ)、発生廃棄物、埋立廃棄物で比較的大きな
削減効果が得られることが分かる(それぞれ傾き-1.09、-1.11、-0.70、-0.76)。木材の削減
効果が再利用率よりも大きくなるのは、現場で投入される木材以外にも、他の建材や設備の製
造段階で生じる木材消費が計算されるためである。CO2(バイオ)は解体工事における廃木材
の焼却による負荷がほとんどであるため、木材の再利用率に近い削減率となっている。また、
他の環境負荷については傾きが-0.1〜-0.5の間にあり、木材の再利用率1に対して、0.1〜0.5
の削減率が得られることを示している。
 民家再生は多くの環境負荷を削減するが、中でも上述した4つの環境負荷(木材消費量、
CO2(バイオ)排出量、発生廃棄物量、埋立廃棄物量)において大きな効果を得る。





図-1.2.1 建築工事における木材の再利用率と環境負荷の削減効果



1.3 民家再生のコストへの影響

 同様に建築工事における木材の再利用率(横軸)と工事全体のコストの削減効果(縦軸)の
関係について見たものが図-1.3.1 である。
 図によると、木材の再利用率が小さい場合は、人件費の増加が建材費の削減を上回って、通
常の建替より数%コスト増になるが、一定の再利用率を超えると、人件費の増加が建材費の削
減を下回って、コスト減になることがわかる。このコスト増減を決める境界は、木材の再利用
率20%の付近である。再利用率がこれを上回るとコスト削減となり、下回るとコスト増加と
なる可能性が高いことを示している。
 従って、一定の再利用が達成できれば、民家再生が通常の解体・新築に比較して安くなる可
能性がある。再生によって得られる住宅と同じ住宅を建てるとすれば、再生は必ずしも高い買
い物ではない。



図-1.3.1 建築工事における木材の再利用率とコストの削減効果

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