第3部
 資料


3.1 ライフサイクルアセスメント(LCA)

3.1.1 はじめに
 本報告書では、ライフサイクルアセスメント(LCA)の考え
方を用いて民家再生による環境負荷削減効果の評価を行っている。
 ライフサイクルアセスメント(LCA)は、ある製品の機能
あるいはあるサービスを享受するにあたって生じる環境負荷や
環境影響を定量的に分析・評価する手法である。
例えば製品の場合など(図-3.1.1)、原材料の採取から
製品の製造、使用、廃棄(リサイクルを含む)に至るまで、
製品の全生涯(ライフサイクル)にわたって、消費される資源
や排出される汚染物質など(環境負荷)を計算し、その環境
影響について分析・評価を行うのである。
 このような考え方を用いた最初の研究は、1969 年にコ
カ・コーラ社の委託により、米国のミッドウエスト研究所に
よって飲料容器を対象に行われた。当時米国では、飲料容器
の散乱対策およびリサイクルの促進が大きな社会的課題と
なっており、特に使い捨て飲料容器に対する批判が各方面
で高まっていた。コカ・コーラ社は自社オリジナルのリター
ナブルびんを対象として研究を依頼したのである。欧州に
おいても容器包装(特に飲料容器)の問題、すなわちごみ問
題がLCA研究の出発点となっており、日本においても、主
としてごみ問題への対応から研究がスタートした。

図-3.1.1 製品のライフサイクル



3.1.2 LCA の構成要素
LCAは図-3.1.2に示すように4つの要素か
ら構成される。
 (1) 目的と評価範囲の設定
   LCA実施者の意図する用途に整合する
   よう、目的と評価範囲を明確に設定する。
(2) インベントリー分析
   (1) で設定した製品の機能やサービス
   を享受するために消費される資源や排
   出される汚染物質などについて計算を
   行い、その目録(インベントリー)を
   作成する。
(3) インパクト評価
   (2) で作成したインベントリーから、潜在的
   な環境への影響(インパクト)を評価する。

図-3.1.2 LCA の構成要素

 (4) 結果の解釈
   (3) で設定した目的や評価範囲に照らして、インベントリー分析やインパクト評価の結果を解釈する。
 図-3.1.2にも示したように、これらの要素は相互に関連しており、実際の作業においてはこ れら要素間での往復運動が必要である。
 以下、(1) 〜 (3) についてやや詳しく述べるが、本報告書では(1) (2) 及び(4) を行っており、(1) (2) については本報告書での
内容についても触れる。


3.1.3 目的と評価範囲の設定
 LCA の結果は、例えば以下のように利用できる。
  (1) 同一製品やサービスの比較
  (2) 製品やサービスの改善点の抽出
  (3) 製品やサービスの改善効果の検討
  (4) 製品やサービスの基準達成度や目標達成度の検討
  本報告書の目的は、この分類に従えば(1) あるいは(3) に相当しよう。これらの目的に応
  じて、評価範囲の設定がなされることになるが、特に重要なのが以下の項目の設定である。
  ●機能単位
   対象とする製品の機能やサービスの単位。本報告書でこれは、「旧邸の解体と新邸のも
   つ機能」であり、これを揃えることで、再生工事と建替工事の比較を行っている(2.1.1参照)。
  ●システム境界
   対象とする製品やサービスのシステムの境界。本報告書でこれは、「旧邸の解体から新
   邸の新築」であり、従って建築物の全生涯(ライフサイクル)を対象とはしていない 
   (2.1.1 参照)。これは、旧邸が解体される以前、新邸が新築されて以後については、再
   生と建替で同じ環境負荷が発生していると仮定しているためである。また、建築物に必
   要な資材を生産するためには、その資材そのものを生産することによって発生する環境
   負荷と、その資材を生産するためのプラントの建設や各種製造機械の製造によって発生
   する環境負荷とがある。本報告書では後者の「資本財生産に関わる環境負荷」について
   考慮していない(2.1.3(1)参照)。


3.1.4 インベントリー分析
 3.1.3 で設定した機能単位とシステム境界
において、製品やサービスのライフサイクルを
通じて投入される資源や排出される廃物に
ついて計算を行うのがインベントリー分析である。
結果は、「3.3 各事例の評価結果」に掲載し
たような表の形で表される。
 インベントリー分析の第1段階はプロセ
スツリーの作成である。このプロセスツ
リーは、3.1.3で設定したシステム境界内に
おける全てのプロセスを樹形図(ツリー)
状に描いたものである。
 木造建築物を生産するためには様々な資
材が必要である。図-3.1.3 のように、その
1つに合板があるが、合板は原木と接着剤
から生産され、その際電力や熱源を必要と
する。接着剤の原料は石油製品であり、石
油製品は原油の採掘までその元を遡ること
ができる。一方、木造建築物は生産された
後利用されることとなるが、生活を営む上

図-3.1.3 プロセスツリーの例
では電気やガス、水道などが必要であり、これらの生産にも様々な資源が消費される。さらに、
寿命がつきれば木造建築物は廃棄されるが、その廃棄物を処理処分するにあたっても資源が消
費される。これらの関係を描いたものがプロセスツリーである。
 ある木造建築物1軒で得られる機能を実現するために、どんな環境負荷がどのくらい発生す
るのかを計算したいとしよう。この場合、このプロセスツリーに描かれたプロセス全てについ
て、その各プロセスにおける物質収支を計算しなければならない。
 その際、2つの方法がある。
  (1) 積み上げ法
  (2) 産業連関法
 各プロセスにおけるプロセスデータ(物質収支に関するデータ)を収集し、計算していくの
が(1) 積み上げ法である。一方、すでに存在する産業連関表(総務庁[1994])を応用してこ
の計算を行うのが(2) 産業連関法である。産業連関表は図-3.1.3 に描いたようなプロセスの
相互関係(実際には産業間の相互関係)を、日本全体について「お金の取引で」表現した表で
あるから、これもプロセスデータの一種と考えられる。この表を用いれば、ある産業から製品
やサービスを購入した際に、波及的に起こる生産を金額で計算することができ、この金額を環
境負荷に変換することができる。詳細は、「3.2 産業連関法により作成した原単位」や、そこ
で紹介した文献を参照されたい。
 両手法は本質的には同じであるが、それぞれの利点欠点は2.1.3(1)に記したとおりであ
り、本報告書では両手法を組み合わせて分析を行った。


3.1.5 インパクト評価
 3.1.4 の結果として得られたインベントリーを環境への影響(インパクト)を示す数値とし
て表すのがインパクト評価である。本報告書では、これを行っていないため、簡単に述べるに
とどめるが、これには以下の3つの段階がある。
  (1) 分類
  (2) 特徴づけ
  (3) 重みづけ
 環境問題には、地球温暖化やオゾン層破壊などの地球レベルの問題から、大気汚染、酸性雨、
富栄養化など地域レベルの問題まで様々ある。
 例えば、地球温暖化を考えてみよう。地球温暖化を引き起こす温室効果ガスにはCO2以外に
も、CH4(メタン)やSOx、NOx、フロンなどがある。インベントリー分析ではこれらの排出
量が個々に計算されるが、計算されたこれらの環境負荷項目を相当する環境問題に分類してい
く作業が(1) 分類である。
 次に、これらの温室効果ガスは、それらが全体として地球温暖化を促進している。従って、
これを統合して地球温暖化への影響度として表す作業が(2) 特徴づけである。
 最後に、例えば、ある同一機能を持つ製品について分析すると、一方が地球温暖化に有利、
片方が酸性雨に有利、といったトレードオフの関係が生ずる場合が多い。このような場合、複
数の環境問題間で重みづけを行い、どちらの製品がよりよいのかを判断する必要が生じる。こ
れが(3) 重みづけである。
 これらインパクト評価の手法は未だ開発途上にあり、本報告書ではこれらの作業を行ってい
ない。もっとも,本報告書が対象とした環境負荷項目が限られていることも理由である。
3.1.6 おわりに
 以上、簡単にLCAの概要を記したが、具体的な作業を行うにあたっては、様々な問題をク
リアしなければならない。LCAの詳細については、(社)未踏科学技術協会[1995]、LCA実
務入門編集委員会[1998]、(社)環境情報科学センター[1998]、(社)日本建築学会[1999]、
CML [1994]、SETAC [1991]、SETAC [1993] などの文献を参照されたい。





3.2 産業連関法により作成した環境負荷原単位

3.2.1 はじめに
 2.1.3でも触れたように、LCAにおけるインベントリー分析には、積み上げ法と産業連関法
とがある((社)未踏科学技術協会[1995])。積み上げ法は、個々のプロセスにおける環境負
荷を調査して積み上げることから、詳細なプロセス分析が可能な反面、多様な資材を用いる製
品では、データ収集が現実的に困難である。一方、産業連関法は、産業連関表を基礎データと
して使用することから、データの精度あるいは確度は落ちるものの、包括的な分析が可能であ
り、これまで土木構造物・建築物の分析で汎用されてきた。
 産業連関法による環境負荷原単位は、エネルギー、CO2を中心に多々作成されている。これ
らのうち、内容が公表されているデータベース(400部門以上)の特徴を表-3.2.1にまとめた
((社)日本建築学会[1998] を再構成)。
 建設省総合技術開発プロジェクト建築委員会[1996] のデータベースは、池田ら[1996] の
データベースよりもCO2排出の考え方が簡略化(廃棄物焼却、各種副生ガス等を未算入)され
ており、全般に小さな値となっている。科学技術庁[1998] のデータベースは、多くの製品、
多くの環境負荷について、上方推定の考え方を用いながら原単位として整備したものである。



表-3.2.1 公表されているデータベース(400 部門以上)の特徴((社)日本建築学会[1998] を再構成)

本藤ら[1998] のデータベースは、エネルギー、CO2 に加え、SOx、NOxについての詳細な
推計を含み、海外での負荷を別途積み上げによって考慮している。(社)日本建築学会[1998]
のデータベースは、本藤ら[1998] のデータベースを出発点として、建設部門分析用産業連関
表、固定資本マトリックスなどを用いて各種のデータ処理を施したものである。環境負荷項目
としては、科学技術庁[1998] が群を抜いている点、境界条件としては、本藤ら[1998] が輸
入比率の高い5品目(鉄鉱石、石炭、原油、LNG、アルミ新地金)について、海外での負荷を
別途積み上げによって考慮している点、(社)日本建築学会[1998] がこれに加えて固定資本
形成分を考慮している点、などが特徴的である。
 廃棄物については、竹林ら[1995] が製造業における産業廃棄物(19種)の発生量(約400
部門、未公表)、鶴巻ら[1997] が産業廃棄物(19種)及び一般廃棄物の埋立量(約90部門、
公表)、大平ら[1998] が産業廃棄物(19 種)の発生量(約30 部門、公表)について原単位
を作成しているが、対象とする廃棄物の不十分さや部門数の少なさなどが課題として挙げられ
る。また、エネルギー以外には資源項目に関する原単位が見られない。
 こうしたことから、民家再生の分析を行うにあたって、産業廃棄物(19種)及び一般廃棄
物の発生量及び埋立量について、約500部門の原単位を作成した。また、資源項目について、
本藤らがCO2 などの排出量を算出する際に作成したデータベースをもとに、同じく約500部
門の原単位を作成した。
 さらに、温暖化対策などを検討するにあたっては、エネルギーを再生不可能なのものと再生
可能なものに、CO2を化石燃料起源のものとバイオマス起源のものとに分離することが有益で
あることから、これらを別々に作成した。
 なお、資源項目及びエネルギー、CO2、SOx、NOx の各項目について原単位を作成するに
あたっては、本藤ら[1998] の作成したデータベースを基礎に用いるが、これは本藤らが、で
きるだけ一次統計に基づいて推計を行っていること、SOx、NOxについて詳細な推計を行っ
ていること、及び輸入比率の高い5品目について海外での負荷を別途考慮していることが理由
である。


3.2.2 対象とした環境負荷
(1)投入される資源
 エネルギーの使用等に関連する資源として、原料炭、一般炭、原油、LNG、天然ガスを、建
築活動に関連する資源として、鉄鉱石、石灰石、骨材、木材を取り上げた(9項目)。
 さらに、エネルギー関連資源をエネルギー換算した。なお、エネルギーについては、これを
化石燃料等起源とバイオマス起源に分割した(2項目)。
(2)排出される廃物
 発生廃棄物(産業廃棄物19種類、一般廃棄物、合計)、埋立廃棄物(産業廃棄物19種類、一
般廃棄物、合計)を取り上げた(42 項目)。
 エネルギーの使用及び木材の焼却等に関連する廃物としてCO2、SOx、NOx排出量を取り
上げた。なお、CO2については、これを化石燃料等起源とバイオマス起源に分割した(4項目)。

3.2.3 原単位の作成方法
 以下では、各産業部門で直接的に生じる負荷を「直接負荷」、これに産業活動を通じて間接
的に生じる負荷を含めたものを「直接間接負荷」と称する。得られる原単位は「直接間接負荷」
である。
(1)計算の諸条件
●基本前提
 産業連関表の取引基本表は1年間に行われた財貨・サービスの取引実態を記録したものであ
るが、個々の取引活動の大きさは「金額」をもって示される。
 従って、産業連関表を用いた環境負荷の推計は、以下の前提の基に成立していることに注意
する必要がある。
・現実には、産業連関表の各部門では、単一の財でなく複数の財が生産されている。ある部
門での環境負荷は、その部門で生産される財の単価に比例して配分される。
・現実には、ある部門で生産された財はまったく同じ財であっても、すべての部門へ同じ単
価で販売されるとは限らない。単価が異なれば、同じ製品でも配分される環境負荷が異な
る場合がある。
●部門の統廃合
 1990年の産業連関表取引基本表(総務庁[1994])は、列部門が411、行部門が527である。
 行部門を列部門と同じ6桁コードで統合した後に、表-3.2.2 に従って統廃合し、最終的に
列部門、行部門ともに405 とした。
●屑・副産物の取り扱い
 産業連関表では、ある財貨の生産にあたって、目的とした財貨のほかに、別の財貨が一定量
生産される場合がある。その財貨を主生産物として生産する部門が他にある場合はこれを「副
産物」といい、ない場合は「屑」という。屑と副産物の違いは、それらを主たる財として生産
する部門があるか否かの違いであり、いずれ
も主たる財の生産に伴い副次的に発生する有
用物であることに違いはない。本稿では、屑
と副産物を同じに扱い、いずれにも環境負荷
は割り当てないこととした。具体的には、産
業連関表では、副産物をマイナス投入方式で
処理しているため、取引基本表からそのまま
投入係数行列を作成すると、非現実的な誘発
が生ずることになることから、特殊分類コー
ド2(屑投入)、3(屑発生)、4(副産物投
入)、5(副産物発生)が付いている取引を
削除して投入係数行列を求めた。



表-3.2.2 部門の統廃合


(2)原単位の作成式
 原単位(負荷/百万円)は、1990年の産業連関表(総務庁[1994])を用いて、CO2、SOx、
NOx、エネルギーについては輸入比率の高い5品目(鉄鉱石、石炭、原油、LNG、アルミ新
地金)の国外での生産プロセスを考慮して(3.2.1)式(本藤ら[1998])、他の環境負荷につ
いては国外でのプロセスを国内と同等と仮定して(3.2.2)式により算出した。
 従って、境界条件としては、固定資本形成分を含まず、輸入財については、5品目の生産プ
ロセスに関わるCO2、SOx、NOx、エネルギーの各負荷を別途考慮し、その他を国産財に同
等と仮定している。
(3.2.1)
(3.2.2)
 ここで、
 ε:生産者価格あたりの原単位ベクトル(1× 405)
 E :国内生産額あたりの直接負荷(各産業部門で直接的に生じる負荷)ベクトル(1×405)
 εm:国外での生産プロセスを考慮した輸入財の生産者価格あたりの原単位ベクトル(1×405)
 A:投入係数行列(405 × 405) A= Ad + ¢ A m + ¢ ¢ A m
 Ad:輸入財を除いた投入係数行列(405 × 405)
 A' m:国外での生産プロセスを国内と同等と仮定した輸入財の投入係数行列(405×405)
 A" m:国外での生産プロセスを考慮した輸入財の投入係数行列(405 × 405)
 なお、(3.2.1)式及び(3.2.2)式は、次の等式から導かれる。
(3.2.3)
(3.2.4)
 さらに、計算された生産者価格あたりの原単位(負荷/百万円、405産業部門)を、(3.2.5)
式により購入者価格あたりの原単位(負荷/ 百万円、525 産業部門)に変換した。

(3.2.5)
 ここで、
 εbi:i部門の購入者価格あたりの原単位
 εpi:i部門の生産者価格あたりの原単位
 X pi:i部門の生産者価格の国内生産額
 xij:i部門の商業マージン・国内貨物運賃(j=卸売、小売、鉄道、道路、通運、沿海内水運、港湾運送、航空、倉庫)





3.2.4 使用したデータ

 (3.2.1)式でεmに代入される海外での負荷については、本藤ら[1998] の推計値を用いた。
また、(3.2.1)式及び(3.2.2)式でE に代入される直接負荷については、以下の値を用いた。
(1)投入される資源
●原料炭、一般炭、原油、LNG、天然ガス、鉄鉱石、石灰石消費量
 本藤ら[1998] がCO2 排出量などを推計するにあたって作成した、産業部門別の燃原料消
費量を用いた。
●骨材消費量・木材消費量
 砂利、砕石の国内供給量(資源エネルギー庁[1992])を砂利・採石部門、砕石部門に、国
産材生産量(林野庁[1992])を素材(国産)部門に割り当てた。
●エネルギー消費量
 先の産業部門別の燃原料消費量(本藤ら[1998])を化石燃料等(黒液以外)とバイオマス
(黒液)とに分割し、これをエネルギー換算して用いた。
(2)排出される廃物
●発生廃棄物量、埋立廃棄物量(産業廃棄物)
 産業廃棄物の発生量(排出量)及び埋立量(処分量)としては、厚生省[1993] の推計値が
一般に用いられるが、通産省[1992] 及び建設省[1992] が、それぞれ製造業、建設業からの
廃棄物発生量を調査している。これら調査の対象業種、廃棄物、項目、及び推計方法をまとめ
ると以下のとおりである。
※厚生省「産業廃棄物排出・処理状況調査」
・対象業種 産業廃棄物の排出が予想される78 業種(大分類11 業種、中分類67 業種)。
・対象廃棄物 法令で定める産業廃棄物19 種類。
・対象項目 排出量及び各処理経路別の処理・処分量。
・推計方法 都道府県が「産業廃棄物処理計画」を策定するために実施した産業廃棄物実態
調査の排出・処理に関するデータを収集し、カバー率補正、年度補正などを施した上で、
各産業の活動指標あたりの原単位を作成し、各産業の活動指標を用いて推計。
※通産省「製造業等に係わる産業廃棄物排出量等全国調査」
・対象業種 製造業及び各種商品小売業。
・対象廃棄物 産業廃棄物19種類及び有効利用物。有効利用物は、「自社内再利用物」と「有
償物」。
・対象項目 排出、処理・処分、再資源化量。
・推計方法 製造業については、通商産業省編「全国工場通覧1990年版」等を参考にして
約5、000 事業所、各種商品小売業については、日本百貨店協会、日本チェーンストア
協会から約700店舗を選定してアンケート調査を行い、集計結果を製造品出荷額、販売
額合計額などのカバー率で割り返し推計。
※建設省「建設副産物実態調査」
・対象業種 建設業。
・対象廃棄物 建設発生土、アスファルト・コンクリート塊、コンクリート塊、建設汚泥、
建設混合廃棄物、建設発生木材、その他(金属くず、廃プラスチック、紙くず)。
・対象項目 排出、再利用、処理・処分量。
・推計方法 全国で竣工した建設工事(公共土木、民間土木、建築)のうち約40 万件を対
象に調査し、全国の工事発注金額(土木工事)、着工・除却床面積(建築工事)を母集団
として、全数値を推計。
 以上の産業廃棄物発生量の推計値(総量)を比較したものが図-3.2.1 である。推計値の違
いは、厚生省が各都道府県の推計値(都道府県により推計手法が異なる)を基に全国推計を
行っているのに対し、通産省及び建設省が、多くのサンプルを基に独自に統計的な推計を行っ






図-3.2.1 産業廃棄物発生量の推計値(総量)の比較



図-3.2.2 産業廃棄物発生量の推計値(汚泥)の比較


図-3.2.2 産業廃棄物発生量の推計値(建設廃材)の比較
ていることによる。
 通産省と厚生省を比較すると、廃棄物種によって推計値の大小は異なる(図-3.2.2)が、全
般的に通産省の推計値の方が大きな値を示す。また、建設省の推計値も、厚生省より大きな値
を示している。なお、建設省の調査では、産業廃棄物に含まれない建設発生土が調査対象と
なっている一方で、多くの産業廃棄物が調査対象となっていない。比較を行った推計値は、建
設発生土を除いたものであるが、同時に多くの産業廃棄物が含まれない点に注意を要する(た
だし、厚生省の推計によるとその量は相対的に小さい)。
 推計方法から、通産省及び建設省による推計値の方が厚生省の推計値より信頼性が高いと判
断されるため、製造業については通産省、建設業については建設省の推計値を採用し、その他
の業種について厚生省の推計値を採用した。なお、建設省の調査は産業廃棄物19種類全てを
網羅してないため、調査対象となっていない廃棄物については厚生省の推計値を用いることと
した。
 さらに、建設業については建設省、その他の業種については厚生省が推計した廃棄物別の埋
立率を用いて、発生量から埋立量を算出した。
 産業廃棄物の発生量については、産業連関表の各産業部門へ割り当てるのが適切だが、処理
量、埋立量については次のような割り当てが本来適切である。すなわち、発生した産業廃棄物
の処理・埋立には、その排出者自身が行うもの(自家処理)と、それを委託された廃棄物処理
業者が行うもの(委託処理)とがあることから、自家処理量は各産業部門に、委託処理量は廃
棄物処理(産業)部門に割り当てるのである。しかし、既存の推計値から、自家処理量と委託
処理量を区別することはできない。従って本稿では、産業廃棄物の発生量、処理量、埋立量す
べてを各産業部門に割り当てることとした。この場合、廃棄物処理(産業)部門からは、廃棄
物が環境中へ排出されない。
 また、産業連関表の産業部門分類は、原則として財貨・サービス及びそれを生産する「生産
活動単位」によって行われる。すなわち、「事業所統計」「工業統計」等では、事業所を単位と
して分類され、同一事業所内で二つ以上の活動が行われている場合には、その主たる活動に
よって格付けされるが、産業連関表の部門分類では、同一事業所内で二つ以上の活動が行われ
ている場合には、原則として、それぞれの生産活動ごとに分類する。例えば、製造小売業の生
産活動は、製造活動と小売活動を分離し、それぞれ対応する部門に計上する(総務庁[1994])。
電鉄会社が鉄道輸送とバス輸送を行っていれば、鉄道輸送の生産活動とバス輸送の生産活動を
分離し、それぞれ対応する部門に計上するということである。
 産業廃棄物の推計は、事業所を単位として行われている。「生産活動単位」と「事業所単位」
を接続するには、コンバータを用いる方法がある(池田ら[1996])が、産業廃棄物の推計は
69業種で、工業統計表に比較して粗すぎるため、本稿では生産活動単位への細分類は行わず、
対応する業種の国内生産額に比例させて、69 業種を405 産業部門に割り当てた。
●発生廃棄物量、埋立廃棄物量(産業廃棄物)
 一般廃棄物の発生量及び埋立量は、厚生省[1994] による推計があり、これを廃棄物処理
(公営)部門に割り当てた。
● CO2、SOx、NOx 排出量
 本藤ら[1997] は、廃棄物の焼却に伴うCO2、SOx、NOx排出を、全て廃棄物処理部門に
割り当てている。しかしながら上記のように、自家処理されるものと委託処理されるものとが
あることから、この考え方では金銭で取引されない自家処理の負荷を適切に見込めず、あるい
は金銭で取り引きされた委託処理の負荷を過大に見込むことになる。また、木くずもコンク
リートくずも同様に焼却され負荷を発することとなる。そこで本稿では、本藤らが推計した
CO2、SOx、NOx 排出量から廃棄物焼却起源の排出を分離し、焼却される廃棄物を発生する
各産業部門に割り当てることとした。
 廃棄物焼却による排出を割り当てるにあたっては、まず、廃棄物別の焼却量(環境庁
[1994])を、各産業部門におけるそれら廃棄物の発生量に比例させて配分し、次に、廃棄物別
の排出係数(環境庁[1994、1998])を用いて排出量を算出した。以上の作業によって、廃棄
物処理(産業)部門には廃棄物を処理するために用いられた燃料使用に伴って生じる負荷だけ
が残る。
 また、木質製品では、CO2を化石燃料等起源とバイオマス起源に分離することで、より詳細
な検討が可能となる。そこで、燃料燃焼等によるCO2を化石燃料等起源(黒液以外)とバイオ
マス起源(黒液)に、廃棄物焼却によるCO2 も化石燃料起源(廃油、廃プラスチック)とバイ
オマス起源(紙くず、木くず、汚泥)に分割した。


3.2.5 得られた原単位
 得られた原単位を解釈するにあたっては、すべて購入者価格当たりの負荷であることに注意
を要する。すなわち、ある産業部門における負荷の総量が大きくても、国内生産額が大きい部
門は原単位が小さく、負荷の総量が小さくても、国内生産額が小さい部門では原単位が大きく
なるからである。なお、以下では購入者価格あたりの原単位について述べる。
(1)投入される資源
●原料炭、一般炭、原油、LNG、天然ガス、鉄鉱石、石灰石、骨材、木材
 当然のことながら、資源を直接採取あるいは加工する部門での原単位が大きい(図-3.2.3)。
原単位が大きいのは、原料炭ではその他の石炭製品、コークス、銑鉄など、一般炭では自家発
電、セメントなど、原油では、石油製品、石油化学基礎製品など、LNG では都市ガス、事業
用電力、アンモニアなど、天然ガスではアンモニア、都市ガス、メタン誘導品など、鉄鉱石で
は銑鉄、粗鋼(転炉)など、石灰石ではセメント、砕石、生コンクリートなど、骨材では砂利・
採石、砕石など、木材では素材(国産)、製材、木材チップなどである。
●エネルギー(化石燃料等起源、バイオマス起源)
 化石燃料起源で原単位が大きいのは、自家発電、銑鉄などである。バイオマス起源で対象と
しているのは黒液のみであるが、原単位が大きいのは、自家発電、パルプ・紙などである(図-
3.2.4)。エネルギー消費全体に占めるバイオマス起源の比率は、パルプで21%、洋紙・和紙で
20%などとなっている。




得られた原単位(原料炭、一般炭、原油、LNG、天然ガス、鉱石石、石灰石、骨材、木材)




得られた原単位(発生廃棄物(合計)、埋め立て(合計))



得られた原単位(主要な産業廃棄物)その1



得られた原単位(主要な産業廃棄物)その2








(2)排出される廃物
●発生廃棄物、埋立廃棄物
 発生廃棄物(合計)で原単位が大きいのは、廃棄物処理(公営)、下水道、養蚕、畜産など
であり、これらの産業部門は発生総量(厚生省[1993])も多い。一方、建設はその発生総量
に比して小さな原単位となった(図-3.2.5)。これは、建設部門の国内生産額が大きいためで
ある。埋立廃棄物(合計)で原単位が大きいのは、廃棄物処理(公営)、下水道などである(図-
3.5)。埋立廃棄物においても、建設はその埋立総量(厚生省[1993])に比して小さな原単位
となった。
 また、主要な産業廃棄物で発生廃棄物原単位が大きいのは、燃え殻ではパルプ・紙、紙加工
品など、汚泥では下水道など、廃油では熱供給業、自動車修理など、廃プラスチックではパル
プ・紙、紙加工品、プラスチック製品など、紙くずではパルプ・紙、紙加工品、出版・印刷な
ど、木くずでは製材、木製品など、繊維くずでは繊維工業製品、衣服・その他の繊維製品など、
ゴムくずではプラスチック製品、ゴム製品など、金属くずでは輸送機械など、ガラス及び陶磁
器くずでは窯業・土石製品など、鉱さいでは鉄鋼など、建設廃材では建設など、動物のふん尿
では畜産・養蚕など、ばいじんでは熱供給業、鉄鋼などである(図-3.2.6)。
 また、発生廃棄物(合計)、埋立廃棄物(合計)で直接間接負荷に対する直接負荷の比率(直
接比率=直接負荷/直接間接負荷、405部門)を見ると、一般的に、素材を製造する部門で直
接比率が高く、機械など素材を用いて組み立てを主とする産業及びサービス業で直接比率が小
さい(図-3.2.7)。発生廃棄物と埋立廃棄物の直接比率を比較すると、畜産では埋立廃棄物の
方が小さいが、建設では埋立廃棄物の方が大きい。これは、建設部門の排出する廃棄物の減量
化率が小さいためである。
● CO2、SOx、NOx
 化石燃料等起源のCO2で原単位が大きいのは、自家発電、セメント、銑鉄など、バイオマス
起源のCO2で原単位が大きいのは、廃棄物処理(公営)、自家発電などである(図-3.2.8)。CO2
排出全体に占めるバイオマス起源の比率は、廃棄物処理(公営)で61%、パルプで28%、洋
紙・和紙で24%などとなっている。廃棄物処理(公営)で大きくなるのは、一般廃棄物に含
まれる紙くず焼却などの影響、パルプ関係で大きくなるのは、黒液使用の影響である。
 SOxで原単位が大きいのは、外洋輸送、自家発電、銑鉄など、NOxで原単位が大きいのも、
同じく外洋輸送、沿岸・内水面輸送、銑鉄などである(図-3.2.9)。





3.2.6 おわりに

 本報告書の分析では、以上の原単位を用いている。作成した原単位は他の分析にも使用可能
であるが、使用にあたっては以下の点に注意する必要がある。
 すなわち、廃棄物処理(産業)部門の原単位には、直接的な発生廃棄物、埋立廃棄物は含ま
れず、その処理に要する資源の生産等に伴う廃棄物のみが計算されている。したがって、この
原単位に処理費用を乗じて発生廃棄物量、埋立廃棄物量を求めることはできない。

参考文献



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